研究概要 |
PC12細胞とその変異細胞であるPC12D細胞を用いて、神経細胞への分化の過程で生じる細胞表面のポリラクトサミン(PNAL)糖鎖生合成量の減少について、PC12細胞では他のがん細胞の場合と異なってβ1-3GlcNAc転移酵素活性の活性低下がその原因であることを明らかにした(Glycobiology,2001,in press)。 神経細胞への分化の過程で神経突起の形成に先立つPNAL鎖合成の減少が生じることを認めたので、PNAL糖鎖を有する細胞膜糖タンパク質(PNAL-GP)の持つ生物学的な役割を明らかにする目的で、PC12細胞からPNAL鎖含有糖タンパク質の分離と精製を試みた。Triton X-114による相分離、DSA Agaroseを用いたaffinity column、ゲル濾過HPLCによって、PC12細胞由来のPNAL-GPはSDS-PAGEから分子量が85KDと63KDのスミアー状のバンドを与える二種が存在すること。Endo-β-galactosidaseによって85KDのPNAL-GPは79KDと67KDに、63KDのPNAL-GPは55KD、46KD、35KD、(29KD)に低分子化され、PC12細胞のPNAL-GPには結合するPNAL鎖含量を異にする少なくとも5〜6種類のものが含まれていることが分かった。 ^3H-Glucosamineで代謝標識された膜画分のauto radiographyから、未処理のPC12細胞では僅かにしか検出されないが、2日間のNGF刺激で増強し、PC12D細胞ではNGFの添加の有無に関わらずconstitutiveに発現されていた35KDのバンドは、63KDのPNAL-GPに由来するPNAL鎖含量の高い糖タンパク質であった。現在、63KDのPNAL-GPを主に含む画分を用いてモノクローナル抗体を作製しているところである。
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