研究概要 |
上皮性癌細胞の多くが産生するムチン型糖タンパク質(ムチン)が単球/マクロファージを活性化し、IL-1βなどのサイトカインの分泌を亢進することを明らかにしてきた。ヒト末梢血単球やヒト単球由来細胞株THP-1細胞を用いてさらに詳細に検討した。これらの細胞とヒト腸癌細胞LS180,CaCo2,CoLo205細胞との共培養により、培養上清へのIL-1βの分泌が著しく高まった。すなわち、THP-1細胞とヒト末梢血単球で、単独培養に比して、それぞれ約4倍、25倍のIL-1βが分泌された。これらの腸癌細胞の培養上清を加えた場合よりも著しい効果が認められ、細胞表面に存在するムチンの効果と考えられた。 次に、LS180細胞の培養上清よりムチンを単離し、活性化機構について検討した。上記の細胞からのIL-1βの分泌は、ムチンの濃度依存的に上昇し、1μgタンパク質/ml程度でその効果は認められ、同濃度のLPSの効果に匹敵する作用が認められた。ヒト末梢血単球(2×10^5細胞)の場合、24時間で約900pgのIL-1βが分泌された。また、THP-1細胞を用いた系において、ムチンを加えた15分後に細胞を回収し、りん酸化された成分を検索したところ、ホスホリパーゼCγ1であった。 次に、THP-1細胞を^<35>S-メチオニンで代謝標識した。細胞の溶解物をウシ顎下腺ムチンを結合したセファロースカラムに通した。1M塩化ナトリウムを含む溶出で溶出した。結合物をSDS-PAGE後、フルオログラフィーとした。主要なバンドは、スカベンジャーリセプターの分子サイズと一致した。これらの結果は、ムチンがスカアベンジャーリセプターを介して、単球/マクロファージを活性化することを示している。
|