研究概要 |
単球/マクロファージにおけるCOX-2の誘導と生物学的意義について検討した。ヒト腸癌細胞LS180とヒト末梢血単球を共培養すると上清へのPGE2の産生が亢進することを見いだした。LS180細胞の培養上清を単球の培養液に加えても同様の現象が起こることから、LS180細胞の分泌物にその作用が存在することがわかった。LS180細胞の培養上清をセファロース6Bにより分画したところ、素通り画分にその活性が認められ、ムチンの溶出位置と一致した。さらに、過塩素酸沈殿ついでHPLCによるゲルろ過によりムチンを精製し、最終的にムチンに単球/マクロファージを活性化する作用があることを確認した。PGE2の産生が亢進することからCOX-2の誘導についてmRNAおよびタンパク質レベルで検討した。mRNAについては、RT-PCRおよびノーザンブロットにより検討した。タンパク質レベルでは、抗COX-2抗体を用いてCOX-2タンパク質を免疫沈降し、電気泳動後ウエスタンブロットにより、ナイロン膜に転写した。膜上のCOX-2は同抗体を用いて検出した。mRNAおよびタンパク質レベルでムチンの濃度依存的に誘導されることがわかった。時間的には2時間でmRNA,4時間でタンパク質の誘導がピークとなった。また、PGE2の分泌も4時間以後に急激に増加した。次に、ヒト結腸癌組織を用いて、組織化学的に浸潤したマクロファージでのCOX-2の発現、ムチンの分布を調べた。浸潤したマクロファージでは、癌組織周辺に認められ、近傍にムチンが存在する場合には、COX-2の誘導が認められた。従って、in vitroで認められたムチンによるCOX-2の誘導が癌組織においても強く示唆された。
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