研究概要 |
活性型ビタミンDは,乳がん,前立腺ガン,肺ガン,大腸ガンなど様々な癌細胞に対して増殖抑制,分化誘導,アポトーシス誘導などの抗腫瘍活性を示すことがin vitroおよびin vivoの実験で証明されている.これらの活性は,類似の生理活性物質に比べて遥かに強いものであり,その臨床応用が強く期待されている.しかし,作用の選択性(正常細胞と腫瘍細胞)や副作用(高カルシウム血症)の低減化などの面で解決すべき多くの問題が残されている.我々は,これらの問題を解決するために本研究を平成12年に開始した.これまでの研究で以下の諸点を明らかにしている. 1)活性型ビタミンDのA環2位にメチル基を導入することにより,著しい活性をもつスーパーアナログの創出が可能となる. 2)活性型ビタミンDのA環1位と3位の水酸基を異性化することにより,癌細胞に対して分化とアポトーシスのいずれかを選択的に誘導し得るアナログの創出が可能となる. 3)上記2つの特徴を組み合わせることにより,癌細胞に対する選択性の高いアナログの創出が可能となる. 最終年度である平成14年度は,副作用(特に高カルシウム血症)軽減化にかかわる構造モチーフの探索を目標に,カルシウム作用の弱いアナログである22-oxacalcitriolの代謝と代謝物の生理活性検索を中心に細胞およびヒトレベルでの研究を行った.研究成果は以下の通りである. 1)22-oxacalcitriolは,主に側鎖の脱水反応またはA環3位水酸基の異性化反応により不活化される. 2)上記2つの代謝系に関与する酵素は,これまでに発見されているビタミンD代謝酵素とは異なる. 4)上記2つの代謝系を相互に調節するメカニズムが存在する. 5)ビタミンD誘導体の代謝酵素に種特異性が認められる.従って,動物の結果をそのままヒトへ外挿することはできない.このためには,既知の代謝酵素(ヒトおよびラット)を発現する大腸菌発現系が非常に有効な活性スクリーニング法となることを確認した.
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