ヒト透明帯タンパクの遺伝子組換法による生産と避妊ワクチンへの応用

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12672141
• 研究機関: 兵庫医科大学
• 研究代表者: 赤谷 昭子 (長谷川 昭子) 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (50212402)
• 研究分担者: 澤井 英明 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (80215904) ; 繁田 実 兵庫医科大学, 医学部, 助教授 (80122315)
• キーワード: 受精阻害 / 精子-透明帯相互作用 / 卵子 / ZPAタンパク / 人口抑制

研究概要

哺乳動物の卵細胞の周囲を取り巻く透明帯は、(1)抗原性の強さ、(2)組織特異性の高さ、(3)受精における重要性から、避妊ワクチンへの応用が盛んに行われているが、天然の透明帯を用いる方法では、一定の純度の製品を安定して供給することが容易ではない。本研究の目的は、ヒト透明帯タンパクのひとつを遺伝子組み換法で大量に生産し、天然の透明帯と同様な抗原活性を保持しているか、また、対応する抗体が避妊ワクチンとしての効果を示すかどうかを検討することである。平成12年には、次の4つの項目について実験を行い、結果を得た。
1,米国Jurrien Dean博士より供与を受けたヒトZP2(hZP2)タンパクをコードするDNA断片を元に、hZP2のアミノ末端より206アミノ酸を発現するベクターを構築した。大腸菌(BL21)を形質転換し、目的の組換体hZP2タンパクを1mg/ml brothの高収量でinclusion bodyとして合成することに成功した。これを8M尿素で融解し、His-tagを利用し、ニッケルカラムで精製した。
2,すでに保有しているヒト透明帯に反応するモノクローナル抗体を用いて、組換体タンパクが天然の抗原性を保持していることを確認した。
3,透明帯タンパクhZP2は先体反応を誘起した精子と反応することが知られているので、組換体タンパクが生理機能を維持しているかどうか、すなわち、先体反応ヒト精子が組換体タンパクに結合するか否か検討した。
4,次に、組換体タンパクを完全フロインドアジュバントとともにウサギおよびマウスに免疫した所、いずれの動物においても天然のヒト透明帯と反応する抗体が産生された。そしてこれらの抗体はヒト精子の透明帯への結合をin vitroで阻害した。

研究成果

• [文献書誌] Hasegawa,A.,Tsubamoto,H.,Hamada,Y.and Koyama,K.: "Blocking effect of antisera to recombinant zona pellucida proteins (r-ZPA) on in vitro fertilization"American Journal of Reproductive Immunology. 44. 59-64 (2000)
• [文献書誌] Govind,C.K.,Hasegawa,A.,Koyama,K.and Gupta,S.K.: "Delineation of a conserved B cell epitope on bonnet monkey (Macca radiata) and human zona pellucida glycoprotein-B by monoclonal antibodies demonstrating inhibition of sperm-egg binding"Biology of Reproduction. 62. 67-75 (2000)
• [文献書誌] Shigeta,M.,Hasegawa,A.,Hamada,Y.and Koyama,K.: "Analysis of B cell epitope of a glycoprotein porcine zona pellucida (pZP1)"Journal of Reproductive Immunology. 47. 159-168 (2000)
• [文献書誌] Shibahara H.,Toji,H.,Shigeta,M.,Yoshimoto,T.,Shima,H.and Koyama,K.: "Successful Pregnancies in a case of retrograde ejaculation associated with tethered spinal syndrome"Journal of Assisted Reproduction and Genetics. 17(4). 233-237 (2000)
• [文献書誌] Sawai,H.,Komori,S.,Sakata,K.,Nakae,K.,Shima,H.,Matsumoto,F.,Matsumoto,H.,Onishi,Y.,Okada,Y.,Yoshida,O.and Koyama K.: "Molecular analysis of familiar androgen insensitivity syndrome due to replacement of glutamic acid 802 by lupine."Journal of Human Genetics. 45. 342-345 (2000)