研究概要 |
B型肝炎ウイルスのX遺伝子はミトコンドリアに局在し、その異常凝集をおこさせ、細胞死を誘導することを明らかにしてきた。X遺伝子による細胞死の機構の解明を目的として解析を行っている。まず、X遺伝子の転写活性化能が細胞死誘導と相関があるかを調べた。転写活性化能を持たないX遺伝子変異体も細胞死誘導能があることから、X遺伝子による細胞死誘導はBax等細胞死を誘導する遺伝子を転写活性化することによるものではないことを明らかにした。さらに、Xタンパク質の細胞死誘導に必要な領域を解析したところアミノ酸68-117の領域で十分であることがわかった。リコンビナントタンパク質を用いた解析の結果、in vitroでもこの領域のみでミトコンドリアに結合するが、Xタンパク質のミトコンドリアへの結合によってチトクロームCやAIFの放出は起こらなかった。しかし、アミノ酸68-117の領域を細胞内で発現させるとミトコンドリアの膜電位の低下が引き起こされることが、ミトコンドリアの膜電位に感受性のある染色剤JC-1を用いた解析によって明らかになった。これらの結果から、ミトコンドリアの膜電位低下がX遺伝子により誘導される細胞死では重要な要因になっているのではないかと考えている。現在さらに、Xタンパグ質がどのような機構で膜電位低下を引き起こすか、またXタンパク質と相互作用するミトコンドリアのタンパク質について解析中である。また、Xタンパク質によって活性化されるシグナル伝達系に関しては:HIV TATとXタンパク質との融谷タンパク質を細胞内に導入する系を確立することができたので、細胞死、細胞増殖の際に活性化されるMAPK,SAPK等のシグナル伝達系の活性化の解析を進めている。
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