研究課題/領域番号 |
12672142
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研究機関 | (財)癌研究会 |
研究代表者 |
白形 由美子 財団法人 癌研究会, 癌研究所・遺伝子研究施設部, 研究員 (60179041)
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研究分担者 |
小池 克郎 財団法人 癌研究会, 癌研究所・遺伝子研究施設部, 部長 (30085625)
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キーワード | B型肝炎ウイルス / X遺伝子 / 細胞死 / ミトコンドリア / タンパク質導入 / 活性酸素 |
研究概要 |
B型肝炎ウイルスのXタンパク質はミトコンドリアに局在し、細胞死を誘導することを明らかにしてきた。Xタンパク質のミトコンドリアへの局在が細胞死誘導能と非常に強い相関を示すこと、また、Xタンパク質が細胞死を誘導する際には、ミトコンドリア膜電位の低下が起こることを明らかにした。さらに、ミトコンドリア膜電位の低下を薬剤等により抑えることによって、X遺伝子導入による細胞死が抑制されることから、膜電位低下が細胞死誘導に重要であると考えられる。また、Xタンパク質はHIV TATタンパク質のように培地にタンパク質を添加することによって、細胞内に導入されることが報告されている。今回Xタンパク質の変異体も作製し、細胞内への導入を調べたところ、Xタンパク質のみならず、作製した変異体もすべて細胞内に導入されることを確認したので、この系を用いて細胞死が起こる過程を解析している。HuH7細胞ではタンパク質導入の系で、WST-1 assayによって細胞死誘導が認められ、この時、細胞内ATP濃度の急激な減少が見られた。さらにこの条件下で、活性酸素が生成していることを明らかにした。これらの結果はXタンパク質がミトコンドリアPTP complexに何らかの傷害を与えていることを示唆している。また、活性酸素は様々な系で癌化および細胞傷害に深く関わっていることがすでに知られている。我々の結果は、B型肝炎ウイルス感染時にはXタンパク質発現に伴って活性酸素が生成し、肝炎の増強および肝癌発症を惹起している可能性を示唆するものである。今後さらにXタンパク質がどのような機構で活性酸素生成を引き起こしているか、その分子機構を解明していく予定である。
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