本研究の結果、先ず、LPSによるマクロファージのアポトーシスの誘導機構に関して、p38 MAP kinaseの活性化そのものの持続ではなく、この活性化に先立って起こることが知られているp38 MAP kinaseのリン酸化の持続が、アポトーシスの誘導に重要な役割を果たすことが示唆された。マクロファージはLPSによる活性化のシグナル伝達において、p38 MAP kinaseのリン酸化につづいて脱リン酸化が起こり、その脱リン酸化の起こる時間経過にともなってマクロファージは活性化への道を進む。ところが、この脱リン酸化が阻害されてリン酸化型のp38 MAP kinaseが長く核内に局在すると、マクロファージのアポトーシスが誘導されることが示唆された。以上がLPSと共にアポトーシスの誘導に必要な因子であるタンパク合成阻害剤、シクロヘキシミドを添加する時間、ならびに同時添加したLPSとシクロヘキシミドを洗浄する時間を変えた実験によって明らかになった。 また、LPS添加初期に起こるシグナル伝達は活性化とアポトーシスで共通であった。LPSの添加後15分以内に進行する経過を分子レベルで詳細に検討するため、血清存在下にLPSを添加して1-15分間加温してから細胞を冷却しながら洗浄し、LPSを除くと同時に血清を除き、その後は血清非存在下で培養してマクロファージの活性化あるいは細胞死の誘導を調べた。その結果、血清存在下ではLPSを1分間、37℃で処理するだけで活性化もアポトーシスもシグナルが伝わることが示された。また、この初期に起こるシグナル伝達にはTLR4が必要で、さらにCD14の発現量が調節機構に関与することが示唆された。
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