かつて私共が行ったin vitro実験から強く示唆されていた、ヌクレシドニリン酸キナーゼ(NDPK)の細胞膜惰報伝達系(アデニル酸シクラーゼ系(AC))におけるGTP供給作用を、in vivo系(ドミナントネガティプ発現細胞)で証明する目的で実験を行った。不活性型リコンビナントNDPK(rNDPKmα)を導入したPC12D細胞におけるPACAPによるcAMPレベル上昇についてコントロール細胞と比較検討した。ドミナントネガティプ発現細胞では反応性の低下が予想されたが、結果は実験毎にやや不安定で、一定の傾向を示すまでにとどまった。そこで、PC12D細胞の細胞膜を精製し、リコンビナントNDPKによる情報伝達系への直接作用を検討した。膜NDPKはリコンピナントNDPKによって試験管内では直接阻害、あるいは置換されないことを示唆する実験結果を得たので、NDPKは発現後膜に組み込まれる機構があると想定した。しかし、ドミナントネガティブ株(由来)の細胞膜標品のPACAP+GDPによるAC反応性はコントロール細胞膜標品と全く変わらず、この問題を解明するには至らなかった。PC12D細胞膜AC活性のPACAP応答は完全にGTP要求性であり、GDP作用はNDPK阻害剤であるUDPによって低下することから、膜結合性NDPKの存在は疑う余地がない。細胞質NDPKの細胞膜への移行の可能性は残されているものの、細胞膜局在性の未知のアイソフォームの存在の可能性も視野に入れて、今後解明されるべき問題と考えられる。
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