研究概要 |
小腸の輸送系に匹敵する高い輸送活性を有するリボフラビンの担体輸送系が結腸で見出されたことを踏まえ,小腸に存在する他の各種輸送系の類似輸送系が結腸に存在する可能性を,ラットの摘出腸管組織を用いて探った.D-グルコース,タウロコール酸の各輸送系については,結腸での有意な輸送活性が認められたが,小腸の対応する輸送系及び結腸のリボフラビン輸送系の活性に比べてはるかに低いレベルであった.マルチビタミン輸送系についても輸送活性が認められたが,さらに低いレベルであった.アスコルビン酸,葉酸,ピリミジン類の各輸送系については,輸送活性は検出できなかった.したがって,結腸のリボフラビン輸送系の活性の高さは際立っており,結腸を介する経口薬物送達への応用利用という点で最も有望と考えられる.また,D-グルコース及びタウロコール酸の輸送系についても期待できると思われる. ラットの結腸及び小腸からの循環血中へのシクロスポリンの吸収を比較検討した結果,CYP3Aによる初回通過代謝については,腸管の寄与が大きいこと及び両腸管部位がほぼ同等の代謝活性を有することが示唆された.P糖タンパク質を介する分泌輸送によって制限されている腸管膜透過性については,結腸において小腸よりも低いことが示唆された.P糖タンパク質の分布(結腸>小腸)及びCYP3Aの分布(結腸<小腸)に関するin vitro情報から,結腸においては,P糖タンパク質による吸収制限(膜透過性の低下)が強くなる一方でCYP3Aによる吸収制限(初回通過代謝)は弱くなると予想されている.CYP3Aによる代謝に関して予想と食い違った点を中心に検討の余地があるが,CYP3A及びP糖タンパク質の両者の基質となる脂溶性薬物に関しては,結腸を介する薬物送達は,P糖タンパク質活性(分布)の腸管部位差を主要因とするバイオアベイラビリティ低下を招く危険性があると考えられる.
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