研究概要 |
新しい作用機序を持つ乳がん治療薬の開発を目的とし、一つの分子にアロマターゼ阻害活性とエストロゲンスルファターゼ阻害活性を併せ持つ化合物の開発を目的とし、まず、その基礎的な見地よりアロマターゼ阻害剤の新しい構造活性相関を明らかにすると共に、本酵素の阻害剤結合部位の特性と触媒機能をより詳細に解明することができた。 すなわち、アンドロステンジオンの4β,5β-エポキシドならびにそれらの19-酸素化体ならびに6-エーテルや6-エステル体のアロマターゼ阻害とアロマターゼ反応を触媒すると共に、他の基質である16α-ヒドロキシアンドロステンジオンの4β,5β-エポキシ誘導体を用い、結合部位の特性を解析した。 また、従来報告されているものの中で最も強力なステロイド性阻害剤の別途合成にも成功した。 ついで、目的とする二機能性分子として、前述の基礎的研究成果を参考にしながら天然基質アンドロステンジオンならびにその1,4-ジエン、1,4,6-トリエン誘導体を骨格とし、その6位にp-sulfamoylphenyl基を導入したものを合成した。ついで、これらのアロマターゼならびにスルファターゼ阻害活性を、ヒト胎盤ミクロゾームをそれぞれの酵素源としてアッセイした。その結果、いずれもアロマターゼを拮抗的に阻害し、阻害活性は良好(K_i:23-29nM)であったが、スルファターゼ阻害活性は、25% inhibition 200μM以上と、予期に反し弱いものであった。 今後、これら結果に基づき、スルファターゼ阻害活性に着目した構造活性相関をより重要視した二機能性化合物の開発を計画している。
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