研究概要 |
肥満遺伝子(ob-gene)産物のレプチンは、脂肪細胞から分泌され、視床下部に局在する受容体に結合し、摂食抑制およびエネルギー代謝の亢進をきたす。一方肥満病態においては、血中レプチン濃度は高値を示すにもかかわらず、摂食が抑制されず、余分な脂肪が体に蓄積する。即ちレプチンによるネガティブフィードバックが作動せず、レプチン抵抗性が認められるが、その機序の詳細はいまだ不明である。そこで本研究では、肥満病態モデル動物(MSG肥満マウス:monosodium-L-glutamate投与)を用いて、レプチン抵抗性は、視床下部レプチン受容体の発現に起因するかを明らかにすべく、下記のように実験した。 動物はICR系雌性マウスを用い生後1,3,5,7,9日目にMSG2mg/gを隔日5回皮下投与、対照マウスには生理食塩水を投与し4-15週齢で屠殺採血後、視床下部を切り出し、直ちに液体窒素にて凍結した。全RNAをIsogenにて抽出し、RT-PCRを行いレプチン受容体(Ob-RbおよびOb-Ra)の発現を調べた。又血中レプチン濃度はRIAにて測定した。血中レプチン値は、4週齢ではMSG肥満マウスと対照マウスに有意差を認めないが、6週齢以後MSG肥満マウスでは、有意な高値を示し、週齢増加と共に上昇した。又体重と血中レプチン値の有意な相関が認められた(r=0.763,p<0.01)。レプチン受容体の発現は、機能的に活性を有するOb-Rbの発現が、MSG肥満マウス(12週齢)の視床下部で減弱しており、一方Ob-Raの発現は、両群いづれの視床下部にも認められるが、差異は検出されなかった。 以上の結果は、薬物誘発(後天的)肥満モデル動物において、視床下部に発現するレプチン受容体のうち情報伝達機能を果たすというlong formのOb-Rbの発現低下を介するレプチン作用不全の1つの可能性が推測される。
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