研究概要 |
肥満遺伝子(ob-gene)産物のレプチンは、脂肪細胞から分泌され、視床下部に局在する受容体に結合し、摂食抑制およびエネルギー代謝の亢進をきたす。一方肥満病態においては、血中レプチン濃度は高値を示すにもかかわらず、摂食が抑制されず、余分な脂肪が体に蓄積する。即ちレプチンによるネガティブフィードバックが作動せず、レプチン抵抗性が認められるが、その機序の詳細はいまだ不明である。そこで本研究では、肥満病態モデル動物(MSG肥満マウス:monosodium-L-glutamate投与)を用いて、平成12年度に、視床下部に発現するレプチン受容体のうち情報伝達機能を果たすというlong formのOB-Rbの発現低下を介するレプチン作用不全の1つの可能性を示した。平成13年度は、1)UCP familyの遺伝子発現をもとに、末梢エネルギー代謝促進作用に差異が認められるかどうか。2)産熱性β3アドレナリン作用薬によるレプチン抵抗性改善が認められるかどうかについて検討し下記の結果を得た。動物はICR系雌性マウスを用い生後1,3,5,7,9日目にMSG2mg/gを隔日5回皮下投与、対照マウスには生理食塩水を投与し4-15週齢で屠殺採血後、視床下部を切り出し、直ちに液体窒素にて凍結した。全RNAをIsogenにて抽出し、RT-PCRを行いUCP-1、UCP-2、UCP-3の発現を調べた。 1)褐色脂肪に特異的に発現するUCP-1は、MSG肥満により減弱の傾向を示すが、外因性に投与した産熱性アドレナリンβ3作用薬により、発現が増大した。 2)UCP-2の遺伝子発現は、脂肪組織(褐色、白色)および骨格筋において、発現に差異は認められず、又、MSG肥満による変動も観察されなかった。 3)UCP-3の遺伝子発現は、骨格筋において高発現を示し、アドレナリンβ3作用薬により対照マウス、MSG肥満マウス共に発現増大が認められた。 以上の結果より、MSG肥満マウスのレプチン抵抗性は、視床下部のレプチン受容体OB-Rbの発現低下が、原因の1つと推測される。一方、持続的レプチン高濃度下に曝露されている状況でも、外因性の産熱刺激(BRL37344投与)に対して反応性が残存しており、MSG肥満マウスのレプチン抵抗性には中枢性要因が大であることが推測される。
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