研究概要 |
本研究の目的は,脂肪酸の任意の位置にフッ素を有するホスファチジルコリンを合成し,これを用いて,含フッ素リポソーム膜を形成し,フッ素の核磁気共鳴における緩和時間を測定して,膜の挙動を明らかにし,これに及ぼすビタミンEの影響を調べて,ビタミンEの膜中の動態を解明しようとするものである. 前年度までに,含フッ素ホスファチジルコリンを作るための種々の含フッ素脂肪酸の大量合成に向けた合成法をほぼ確立したので,今年度は各脂肪酸の量産を集中的に行った.また,これらの脂肪酸から,ホスファチジルコリンへの誘導を検討したが,従来の方法に問題があり,収率の改善に迫られたので,その合成法経路の再検討を行い,ほぼ目的を達成した. 一方,筆者らはビタミンEの体内動態の研究の一環として,ビタミンEのクロマノール環上または側鎖のメチル基をトリフルオロメチル基で置換したビタミンEのフッ素同族体を合成しでいるが,クロマノール環のメチレン部へのフッ素の導入には未だ成功していなかった.筆者らの研究室で最近開発したブロモジフルオロ酢酸エステルと銅粉を用いる新しいフッ素化合物合成反応を使って,このビタミンEのクロマン環メチレン部にフッ素を2個有するビタミンE同族体の合成にも成功した. 次年度以降,本年度開発した新しいホスブナチジルコリンの合成法を駆使して,各種含フッ素ホスファチジルコリンを合成し,含フッ素リポソームに誘導して,膜の挙動ならびにこれの及ぼすビタミンEの効果などを検討する.この検討に今回合成した含フッ素ビタミンEを組合せるとさらに有意義な知見が得られると考えている.
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