近年、心疾患や脳血管障害などの疾患が死因の上位を占め、これらの予防薬、治療薬として抗酸化作用を有する物質が注目されている。ユビキノン(UQ)は、ミトコンドリア電子伝達系の構成成分であり、細胞活動に必要なエネルギーの供給や抗酸化作用がその主な機能である。更に、UQは心臓や脳などの虚血による組織障害に対する予防や治療効果を有し、その類縁体は脂質過酸化の抑制、抗マラリア、抗種瘍などの薬理作用が報告されている。 今年度は、抗酸化作用が期待されるUQ類縁体として、1、4-ナフトキノン類を合成し、それらの抗酸化作用を検討した。 1.新規UQ類縁体の合成 1、4-ナフトキノンの2位に種々の不飽和炭化水素鎖を導入た11個の新規UQ類縁体を合成した。 2.呼吸鎖に対する作用の検討 牛心臓ミトコンドリアを用いて、ワールブルグ検圧法によりNADH酸化酵素系及びコハク酸酸化酵素に対するUQ類縁体の作用を測定した。今回合成した新規類縁体は、電子伝達系に対し阻害作用を示したものの、ロテノンやアンチマイシンに匹敵するものは見られなかった。 3.脂質過酸化に対する作用の検討 亜ミトコンドリア粒子では、ADP-Fe^<3+>の存在下、NADH依存的に脂質過酸化が進行する。この条件下、UQ類縁体の脂質過酸化に対する抑制効果をTBA法により調べた。その結果、UQ10やα-トコフェロールよりも強力な脂質過酸化抑制作用を示す化合物を得た。 4.培養アストロサイトの活性酸素障害に対する保護作用の検討 培養アストロサイトを過酸化水素に30分暴露、1日又は5日後の障害を、夫々、MTT法又はDNA断片化率の測定により調べた。UQ10自身は過酸化水素障害を抑制しなかったが、強い抗酸化作用を示したUQ類縁体は本障害を有意に抑制した。
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