研究概要 |
9Z-β-イオノンアナログ鉄カルボニル錯体を用いて,9Z-β-イオニリデンアセトアルデヒドアナログ合成を試みたが収率が悪いことから,パラジウム触媒を用いたカップリング反応を検討することにした. 2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセンアセトアルデヒド体にtert-ブトキシカリウム存在下,N-フェニルトリフルオロメタンスルホンイミドとの反応によりビニルトリフレート体とした.このトリフレートとZ-3-トリブチルスタニル-2-ブテン-1-オールとのカップリング反応を検討した結果,DMF中,触媒としてPd(PPh_3)_4またはPd_2(dba)_3とAsPh_3を用いた場合に反応がスムースに進行しカップリング体を収率よく与えることが判明した.次に,本アルコール体を酸化して9Z-β-イオニリデンアセトアルデヒド体へ変換後,C5ホスホネートでの側鎖の延長と加水分解により9Z-レチノイン酸を選択的に合成することができた. 続いて9位のメチル基を種々の置換基に変えた9Z-レチノイン酸アナログ化合物を合成するため3-アルキル置換プロパルギルアルコールから誘導したZ-スズオレフィンとビニルトリフレートとのカップリング反応を行ったところ,いずれも収率よくカップリング体を与えた.これらのカップリング体は,酸化してアルデヒド体へ誘導でき,本法は9Z-β-イオニリデンアセトアルデヒドアナログの一般合成法となることを見いだした.更に,ここで得たアルデヒドは,先と同様,側鎖の延長と加水分解により対応するレチノイン酸アナログへ容易に誘導でき,9位置換9Z-レチノイン酸の一般合成法を確立することができた.今後生物活性を検討していく予定である.
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