研究課題/領域番号 |
12672172
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉原 新一 広島大学, 医学部, 助教授 (00037607)
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研究分担者 |
山崎 和男 広島大学, 医学部, 教授 (00034017)
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キーワード | 内分泌攪乱化学物質 / エストロゲン活性 / 異物(薬物)代謝酵素 / ヒトP450 / ラット肝S9 / 代謝的活性化 / ビスフェノールA / バイオカニンA |
研究概要 |
外因性内分泌攪乱物質(Endocrine Disrupting Chemicals ; ECCs)の生体影響のリスク評価に当たっては、摂取後の肝ミクロソームに局在するチトクロームP450に代表される異物(薬物)代謝酵素による代謝変換に基づくエストロゲン活性の変動(活性化または不活性化)を考慮に入れなければならない。昨年度の研究結果、代表的な人工EDCであるビスフェノールA(BPA)や植物エストロゲンであるバイオカニンAはヒトやラットの肝S9による代謝変換によりエストロゲン活性の増大がもたらされることを明らかにした。そこで本年度は、これらの代謝的活性化に焦点を絞って検討を行った。その結果、BPAの代謝的活性化にはミクロソーム(チトクロームP450)とサイトソールの両画分の共存が必要であること、さらに一方の加熱操作により活性化能は完全に不活化されることなどから少なくともサイトソール中の因子も蛋白質性のものであることが示唆された。また、強いエストロゲン活性を示す活性代謝物の構造を明らかにすべく高速液体クロマトグラフ/質量分析装置(LC/MS)を用いて検討を加えたところ、この活性代謝物はBPA自身よりも40マス単位大きな質量(M^+-1:267)を、またMS/MSではm/z133の単一フラグメントを与えたことなどからイソプロペニルフェノールの2量体の可能性が示唆された。つぎにバイオカニンAの代謝的活性化はチトクロームP450による4'-位の酸化的脱メチル化の結果、より強いエストロゲン活性を有するゲニステインの生成によることが明らかとなった。これらの結果は摂取されたEDCsのエストロゲン作用は異物代謝酵素による代謝変換により大きく変動すること、特に代謝的活性化を考慮に入れたリスク評価の重要性を改めて提起するものである。
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