研究概要 |
環境由来の化学物質が内在性のステロイドホルモン産生(steroidgenesis)にどのような影響を及ぼすかを解明する目的で、ヒト副腎皮質由来の培養細胞であるH295Rを用いてステロイドホルモン産生に及ぼす環境化学物質の影響を評価するアッセイ法の基礎的検討を行った。H295R細胞の産生するステロイドホルモンについては、産生量の多いコルチゾールを測定することとし、コルチゾール生合成の誘導を行うためのcAMP濃度は1mMとし、処理時間は48時間に設定した。更に影響を評価する化学物質の細胞に対する毒性を評価するため逸脱するLDHと細胞数を測定した。このH295R細胞はヒト副腎皮質由来のステロイドホルモン産生細胞であり、この細胞を用いて環境由来の化学物質の及ぼす影響を検討することは、これらの化学物質のヒトにおけるリスクを評価できるが可能性がある。 このアッセイ法を用い環境中に残存しており、ヒトへの曝露が問題となる農薬DDTとその代謝物、ジコホル、クロルデンおよびヘキサクロルベンゼンの影響、防腐剤等として使用されている各種パラヒドロキシ安息香酸エステル類、高分子を素材とした生活関連製品から溶出が疑われており、内分泌かく乱化学物質としてもリストアップされているスチレンモノマー,ダイマー,トリマー,フタル酸エステル,及びアルキルフェノール類の影響を検討した結果した。その結果、DDTとその代謝物、ジコホル、フタル酸エステルであるフタル酸ジシクロヘキシル、アルキルフェノールであるオクチルフェノール及びノニルフェノール等がH295R細胞のコルチゾール産生を阻害することを明らかにした。さらに、このアッセイ法を用いて食餌として多量に摂取する可能性がある植物エストロゲンであるフラボノイドの影響を検討した結果、6-ヒドロキシフラボンやダイゼイン及びゲニステインをはじめとするフラボンやイソフラボンが同様にH295R細胞の産生するコルチゾール産生を阻害することを明らかにした。
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