研究概要 |
平成12年度の環境化学物質によるマスト細胞からのケモカイン遊離機構の解析に関する研究から、下記の知見が得られた。 (1)ラットがん化好塩基球細胞、マウス骨髄由来肥満細胞を用い、抗酸化剤(DTBHQ)(10μM)の細胞内カルシウム応答への影響、脱顆粒反応への影響、サイトカインであるTNF-α,IL-4並びにケモカインMCP-1の産生を検討したところ、カルシウム濃度上昇は1分以内に、脱顆粒反応は30分以内に起きるが、MCP-1の産生は、TNF-α,IL-4と同様、3時間以上の時間をかけて引き起こされた。TNF-αの産生は、DTBHQとともにprotein kinase Cの活性化を必要としたが、IL-4,MCP-1産生は、DTBHQのみで引き起こされた。MCP-1産生は、mRNAの上昇を伴う転写レベルの活性化により引き起こされていることが、RT-PCR並びにTaqMan-PCRを用いる定量PCR法からも示された。 (2)MCP-1の産生は、RNA合成阻害剤アクチノマイシンD(2μg/ml),免疫抑制剤サイクロスフォリン(300nM),ステロイド剤デキサメサゾン(100nM),p38MAP kinase阻害剤SB202190(3μM)で十分な抑制がみられた。転写因子として、NF-ATの関与することが、リン酸化部位特異的抗体を用いるウェスッタンブロット法で示された。また、p38MAPkinaseは、転写後の翻訳レベルでの制御にかかわっていることが示された。 これらのことより、種々のマスト細胞からのケモカイン(MCP-1)産生が、細胞内カルシウム濃度上昇を促す環境化学物質により促進されること、転写レベルでの活性化を伴っていることが明確に示され、マスト細胞の刺激に伴い遊離される後期炎症因子としての可能性が示された。
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