研究概要 |
1年間に,広島市消防局管内(サービス対象人口1,040,896人;安芸区を除く広島市全域)において発生した病院外心停止症例を,ウツタイン様式に基づいて調査した.広島市消防局が出動したすべての心停止症例について,救急隊員が調査票に記入し,広島大学救急部集中治療部に移送した.病院到着後の項目に関しては,広島大学救急部集中治療部から各医療施設に調査依頼票を送付し,必要項目の記入・返送を依頼した.予め,広島市・安佐・安芸地区の各医師会,および広島市医師会二次輪番制病院群連絡会議において協力を依頼し,ほぼすべての医療機関から速やかな回答をいただいた.それらの結果をコンピューターに入力した.ウツタイン様式に定められた項目(症例数,蘇生非施行症例数,心停止の原因,目撃の有無,by-stander CPRの有無,救急隊現着時心電図所見,心拍再開,入院,24時間後生存,生存退院)について集計した. 1年間の病院外心停止症例は498例(47.9例/人口10万/年)であった.そのうちで蘇生非施行症例25例を除いた「蘇生を試みた症例」は473例(45.5例/人口10万/年)であった.心原性心停止が210例,非心原性心停止が244例であり,心原性心停止の率は46.3%であった.心原性心停止210例の中で目撃された症例が93例,目撃されなかった症例が117例であった.目撃された症例の中には,救急隊が現場到着して後に心停止となった症例が8例あり,ウツタイン様式の推奨にしたがって,以後これらを「救急隊目撃の心原性心停止」として,分けて評価した.目撃された心原性心停止85例の現着時心電図所見は,心静止42例,心室細動21例,電動収縮解離など22例であり,心室細動が占める割合は24.7%であった.蘇生を試みた全症例に対する,「目撃された心原性心室細動」の占める割合は4.4%であった.転帰は,目撃された心原性心停止全体では,生存退院率が4.7%(4例)であった,心室細動症例のみについてみると,生存退院率は19.0%(4例)であった. 初年度の調査研究により,以上の結果を明らかにした.次年度はさらに調査を継続して,(1)国内外からの報告結果との比較分析,(2)わが国の特性に応じたチェックリストの開発,(3)臨床研修医の救急車同乗実習における教育到達目標達成の評価,の段階に進む予定である.
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