研究概要 |
2年間に,広島市消防局管内(サービス対象人口1,040,896人;安芸区を除く広島市全域)において発生した病院外心停止症例を,ウツタイン様式に基づいて調査した. 病院外心停止症例は1025例(49.3例/人口10万/年)であった.そのうちで蘇生非施行症例52例を除いた「蘇生を試みた症例」は973例(46.8例/人口10万/年)であった.心原性心停止が435例,非心原性心停止が515例であり,心原性心停止の率は45.8%であった.心原性心停止435例の中で目撃された症例が205例,目撃されなかった症例が230例であった.目撃された症例の中には,救急隊が現場到着して後に心停止となった症例が35例あり,ウツタイン様式の推奨にしたがって,以後これらを「救急隊目撃の心原性心停止」として,分けて評価した.目撃された心原性心停止170例の現着時心電図所見は,心静止86例,心室細動51例,電動収縮解離など33例であり,心室細動が占める割合は30.0%であった.蘇生を試みた全症例に対する,「目撃された心原性心室細動」の占める割合は5.2%であった.転帰は,目撃された心原性心停止全体では,生存退院率が6.5%(11例)であった.心室細動症例のみについてみると,生存退院率は17.6%(9例)であった. 以上の結果を国内外からの報告と比較することにより,以下の点が明らかになった. (1)国内の報告と比較すると,病院外心停止発生数・心原性心停止の割合・心室細動の割合・生存退院率に大きな差はなく,広島のデータはわが国の少なくとも都市部の現状をよく表している. (2)欧米からの報告と比較すると,目撃された心原性心室細動の生存退院率は中等度にランクされ,決してわが国が後進国ではない. 次年度はさらに調査を継続して,(1)わが国の特性に応じたチェックリストの開発,(2)臨床研修医の救急車同乗実習における教育到達目標達成の評価,の段階に進む予定である.
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