研究概要 |
広島市消防局管内(サービス対象人口約104万人;安芸区を除く広島市全域)において発生した病院外心停止症例の,ウツタイン様式に基づいた調査を継続した. 2000年の病院外心停止症例のうち心肺蘇生術の適応症例は509例(48.9例/人口10万/年)であり,分類としての心原性心停止,目撃された症例,現場到着時の心電図所見が心室細動であった症例数も,前年の調査とほぼ一致し,調査の信憑性がうかがわれた.転帰としては,救命できる可能性がある症例群として注目される「目撃された心原性心室細動」の生存退院率は16.7%(5例)であり,前年度の17.6%とほぼ一致した. これまでの全調査症例1423例のうち8歳以上の「目撃された心原性心室細動」の81例を対象として分析した結果,広島市においても,目撃から除細動までの所要時間が短いほど,生存退院例が有意に多いことが示され,救急救命士が医師の具体的指示を受ける時間の浪費を除くことが,病院外心停止症例の転帰を向上させることが強く示唆された.また,以上の症例を対象とし,スポーツ施設や交通機関関係の場所に目撃された心原性心室細動の頻度が高いことを明らかにし,将来的に欧米と同様に市民救助者に除細動を許可する場合の設置場所のヒントとなる結果を得た. 次年度はさらに調査を継続して,(1)臨床研修医の救急車同乗実習における教育到達目標達成の評価,(2)地域におけるメディカルコントロールの充実への応用を行う予定である.
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