研究概要 |
高齢者の平均余命は年々増加の一途を辿り、本邦は世界有数の長寿国となった。しかし、平均余命で評価される長寿社会は、必ずしも健康高齢社会ではない。健全な高齢社会の成熟を阻害する要因のひとつは、日常生活動作(activity of dailylife, ADL)の阻害である。 日本循環器管理研究協議会(日循協)は、平成8,9年度に全国にまたがる10〜12地域の満65歳以上の高齢者6,000〜13,O00人を対象にADLの実態調査をおこなった。平成10年度はこれらのデータに基づき、ADL阻害例を全国12地域から抽出し、ADL阻害の程度をBarthel indexで評価した。 本研究ではADL阻害者1,492例(日循協コホート,11.5%)について満3年間(平成10〜13年)の生死調査を行い、死亡に及ぼすADL阻害の影響について検討した。 3年間の追跡期間中に死亡した例は130例(9%)であった。Barthel indexで評価したADL阻害の程度を、重度阻害(A群)、中等度阻害(B群)、軽度阻害(C群)に分けて生存率(Kaplan-Miere)を比較すると、A群、B群、C群の順序に低下した。 追跡期間中に受けた医療・介護の状態を考慮してもADL阻害の程度が死亡に及ぽす影響は強く、補正後のC群に対するA, B両群の比較危険はそれぞれ2.6、1.9となった(p<0.001)。すなわち、ADL阻害が高度であれば介護の状況に関わりなく高齢者の生命予後を悪化させた。ADL阻害の要因として脳血管障害が最も頻度が高かったので、健全な高齢社会の創出には脳血管障害の予防が重要と考えられた。
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