遺伝子機能解析を目的とした様々な遺伝子導入法が開発されている中で、アデノウイルスベクターは高い導入効率を持ち、非分裂細胞への導入も可能であるため注目されている。しかしウイルスゲノムが36kbと長いため、ベクター構築においては複雑な手順や複製可能な親株ウイルスの残存といった問題がある。そこで長いDNAを容易に扱えるようコスミドの系を、また特異的なCre-loxP組換え系を利用して簡便にアデノウイルスベクターを作製する方法を開発した。本研究においては、この作製法にいくつかの改良を加えさらに広い範囲でのアデノウイルスベクター利用を可能にする方法を開発した。 1.より大きな発現カセットを挿入できるように、ウイルスゲノムのE1領域を欠損したコスミド(pALC)から、さらにE3領域を欠損させたものを作製した(pALC3)。pALC3にEGFP遺伝子を持つ発現カセットをつなぎ、ウイルス産生能と導入遺伝子の発現を解析したところ、効率のよいウイルス産生とレポーター遺伝子の発現を確認した。 2.Cre-loxPと同様な部位特異的組換え系であるFLP-FRTシステムを、ウイルスベクター作製に利用できるか検討した。両端にFRT配列を持つコスミド(pAFC3)を作製し、ウイルス産生を検討したところ、pALC3とほぼ同じ効率でウイルスを産生することを確認した。 3.loxP配列に挟まれたDNAの下流にEGFP cDNAをつないだ発現プラスミドをpAFC3に組み込んだ。CreブラスミドをコトランスフェクションするとEGFPの蛍光が確認された。これは導入遺伝子の発現を随時誘導できる系を完成させたことになり、細胞毒性のあるタンパク質の解析などに利用できる。本研究において得られた改良によって、さらに効率がよく汎用性の高いアデノウイルスベクター作製法が開発された。
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