研究概要 |
ナイミーヘン染色体不安定症候群(NBS)は、1981年にオランダで発見された新しい染色体断裂症候群であり、臨床的には悪性リンパ腫の高発癌性と免疫不全、性腺機能不全、小頭症、特異顔貌を特徴とし、細胞学的には染色体不安定性と放射線致死高感受性、細胞周期制御異常を示す。我々はこれまで原因遺伝子を8q21にマッピングし、最終的に原因遺伝子NBS1を同定することに成功した。本研究は、NBS1の染色体安定化維持機構における役割解明を目的として、Nbs1ノックアウトマウスの作成を試みた。 すでに2系統のNbs1遺伝子ヘテロ欠損F1マウスを作成した。F1マウスをAtmまたはKu70遺伝子ヘテロ欠損マウスとそれぞれ交配してF2マウスを誕生させ、尻尾からDNAを抽出してPCR法で二重ヘテロ欠損マウスを同定した。現在、二重ヘテロ欠損マウスを交配してNbs1/Atm、Nbs1/Ku70の2種類の遺伝子二重欠損マウス線維芽細胞株樹立を進めている。 これまでに、Nbs1遺伝子欠損マウス線維芽細胞の樹立に成功しており、この細胞に2Gyのガンマ線を照射して24時間培養後、コルセミド処理して染色体標本を作成した。その結果、ナイミーヘン症候群患者細胞と同様な放射線に誘発される染色体不安定性を示すことが確認された。 また、細胞に1,2,4Gyの放射線を照射してディッシュに播種・培養し、約2週間後に出現するコロニー数を計測して生存率曲線を作成したところ、ナイミーヘン症候群患者細胞と同様に、放射線致死高感受性を示すことが確認された。
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