研究概要 |
本研究裸題では、新蜆のリポベプタイド化合物であるβ-1.3-glucan合成阻害物質によるカリニ肺炎の治療薬の開発を目的とし、平成12年度ではFR-1およびFR-2のin vitroにおける抗P.carinii活性について調べ、従来のカリニ肺炎の治療薬であるsulfamethoxazole-trimethoprim(ST)合剤やpentamidineとその有効性について比較検討した.その方法は、マイクロプレートを用いたluciferin-luciferaseバイオルミネッセンスにより抗P.carinii活性を測定した。その概要は、10^7個のP.cariniiを0.1mlのmediumおよび抗P.carinii治療薬であるpentamidine、ST合剤、FR-1およびFR-2と共にマイクロプレートのwellにいれる。培養12および24時間後に培養上清を取り除き、トリクロル酢酸を加え細胞内のATPを抽出する。そして、その10μlをlusiferin-lucuferaseバイオルミネッセンス系に加えてATP量を測定して、P.cariniiの生存数を調べた。その結果、培養24時間後では、pentamidineでその生存P.carinii数はコントロールに比較し80%、ST合剤では10%に減少した。また、FR1およびFR2でもpentamidineと同様な抗P.carinii活性を持つことが明らかになった。 平成13年はFR-1およびFR-2の抗P.carinii活性をin vivoで調べることを目的とし、カリニ肺炎の治癒過程をおよび治療効果についてST合剤およびpentamidineのそれらと比較検討しそれらの有用性について検討した。今までの我々の研究からヌードマウスおよびSCIDマウスがヒトのカリニ肺炎のよい感染モデルになることが明らかになっている。P.carinii感染ヌードマウスおよびSCIDマウスにFR-1およびFR-2(10mg/kg)を皮下注射しその肺炎治癒過程を病理組織学的に検索しST合剤およびpentamidineの治癒過程と比較検討した,その結果、FR-1およびFR-2投与マウスの肺病変は、ST合剤およびpentamidine投与マウスに比較し病変が著しく減少し、早期に肺炎が治癒することが確認された。 以上の結果から、FR-1およびFR-2は従来のカリニ肺炎の治療薬であるsulfamethoxazole-trimethoprimやpentamidineに比較しin vitroおよびin vivoで著しい抗P.carinii活性を持つことがあきらかになり、また、動物実験で副作用も認められなかったことから、今後の臨床での応用が期待された。
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