研究概要 |
糖尿病によって、内因性NOS阻害物質(L-NMMAおよびADMA)の内皮細胞内濃度の上昇とL-arginine濃度の低下を来し、NO産生減少、ひいては血管壁endothelin-1含量増加を招き肥厚性血管病変を増悪するが、これらの変化とaldose reductaseとの関わりについて本年度は検討した。10週齢の日本白色在来種雄性ウサギを以下に示す4群に分け各種実験に供した。 第1群:正常血糖群+生理食塩水 第2群:正常血糖群+Aldose reductase inhibitor(ARI),SNK860(3mg/kg/day,p.o.) 第3群:Alloxan誘発高血糖群+生理食塩水 第4群:Alloxan誘発高血糖群+Aldose reductase inhibitor(ARI), SNK860(3mg/kg/day,p.o.) Alloxanまたは生理食塩水1回静注11週後にARIを飲料水として投与を開始した。1週後、右頸動脈の内皮細胞剥離術を施行した。さらに、4週経過後、全動物を屠殺し、以下に示すparametersについて4群間で比較した。(1)内膜肥厚の程度(Intima/Meda ratio)、(2)頸動脈における内皮依存性cGMP産生、(3)頸動脈内皮細胞中L-arginine/(L-NMMA+ADMA)ratio、(4)頸動脈壁endothelin-1含量、(5)腹部大動脈内皮細胞中AR活性ならびにsorbitol含量。その結果、以下のことが明らかにされた。(1)内皮細胞剥離後惹起される内膜肥厚は高血糖によって増悪したが、ARIによって著明に抑制された。(2)肥厚血管での内皮依存性cGMP産生減少が高血糖によって促進されたが、ARIはこの促進を阻止する傾向を示した。(3)肥厚血管内皮細胞中L-arginine/(L-NMMA+ADMA)ratioの低下は高血糖によって促進され、ARIはこの促進を阻止した。(4)肥厚血管壁中endothelin-1含量蓄積は高血糖によって促進されたが、ARIはこの促進に対して抑制傾向を示した。(5)腹部大動脈内皮細胞中sorbitol含量は高血糖によって著明に増加したが、ARIによって正常値以下に低下していた。一方、AR活性には4群間で差はなかった。
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