研究概要 |
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の感染制御と治療法の研究は,平成10年5月に岡山大学医学部小児科へ,VanA型Enterococcus faeciumが腸内に定着した患者が入院したのを契機として始まった。VREに関する主要な研究課題として,VRE検出法,分子疫学,VRE感染症に対する併用療法の検討を継続している。一連の研究成果の一部は既に論文あるいは著書として発表した。現時点で日本において最も重要であると考えられるVRE対策は,日常の臨床検体からめVRE検出を確実に行うことである。我々は,迅速性・簡便性・再現性に優れ,菌種の同定とバンコマイシン耐性遺伝子の検出を同時に行うことができるmultiplex-PCR法を確立したので(Journal of Clinical Microbiology 38:3092-3095,2000),今年度は本法を基盤としたVRE検出法の研究を主に発展させた。(1)vanB遺伝子は3タイプに分類されることが報告されているが,全ての亜型を検出できる新規プライマーの設計により,より確実なVREスクリーニングが可能となった。(Journal of Clinical Microbiology 39:2367-2368,2001)(2)PCR法を施行していない施設では,日常検査においてvanA, vanB遺伝子保有のE.faecalisとE.faeciumを,vanC遺伝子保有のE.gallinarum, E.casseliflavus, E.flavescensと識別することが院内感染対策上重要である。つまり運動性を有するvanC遺伝子保有株の確認を確実に行う必要がある。運動性試験に用いる市販の各種培地の評価と顕微鏡観察法の検討を行ったDr.Van Hornの依頼で,VRE株をmultiplex-PCR法にて確認し共著論文としてまとめた。(投稿中)(3)VRE治療法において,薬剤の選択に有用となりうるアミノ配糖体耐性遺伝子の検出法としてmultiplex-PCR法を検討した。(Abstract for 41^<st> Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy)一方,今年度新たに日本で分離された約20株のVanA型,VanB型VREの分与を受け,現在分子疫学的検討を進めている。VREに対す抗菌療法に関しては,各種薬剤(単独または併用)による超微形態観察を行い,基礎的観点からの検討を加えた。
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