研究課題/領域番号 |
12672215
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
檜垣 和孝 岡山大学, 薬学部, 助教授 (60284080)
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研究分担者 |
大河原 賢一 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助手 (30291470)
木村 聰城郎 岡山大学, 薬学部, 教授 (10025710)
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キーワード | enteric nerve system / 消化管分泌 / P-glycoprotein / serotonin(5-HT) / quinidine / p-chlorophenylalanine / Voltage-clamp / Western blot |
研究概要 |
小腸には、中枢神経系とは独立したEnteric nerve system(ENS)が存在し、このENSが小腸の運動性や、水・電解質等の吸収を司っていることが知られている。しかしながら、ENSの薬物吸収挙動に及ぼす影響について検討した例は極めて少なく、現在、我々はその系統的な解析を進めている。その結果、受動拡散により吸収される薬物については、アドレナリン作動性神経系の亢進により吸収抑制が、コリン作動性神経系の亢進により吸収促進が起こることを明らかにした。更に、oligopeptide transporterによるcephalexinの吸収が、epinephrine、clonidine等のアドレナリン受容体作動薬により、有意に亢進することを明らかにした。今回は、薬物の消化管における分泌に対するENSの影響を検討するため、小腸粘膜に発現し、比較的脂溶性の高い有機カチオン性の化合物を管腔中に分泌することの知られているP-glycoprotein(P-gp)を介する薬物の分泌に焦点を絞り検討を進めた。基質としては、P-gpの典型的な基質のひとつであるquinidineを用い、quinidineの分泌に対するserotonin(5-HT)の影響を検討した。5-HTは、消化管機能に深く関わっているneurotransmitterであることが知られている。5-HTを負荷しても、quinidineの消化管分泌には変化が見られなかったが、5-HTの生合成阻害剤であるp-chlorophenylalanineの前投与で5-HTを枯渇させることにより、quinidineの消化管粘膜透過は、吸収方向、分泌方向ともに有意に亢進することが明らかとなった。このことは、5-HTの枯渇により、受動拡散によるquinidineの膜透過が亢進している可能性を示すものであったが、分泌方向の透過性が、より亢進していたことから、P-gpを介する分泌の亢進の可能性が考えられた。そこで、verapamilによる阻害実験や、voltage-clamp法による検討の結果、transcellular routeを介するverapamil-sensitiveな機構によるquinidineの分泌亢進が明らかとなった。更に、Western blot法により小腸粘膜上のP-gp発現量を評価したところ、5-HTの枯渇により、その発現量が有意に増大していることが明らかとなった。これらのことから、5-HTの枯渇によりP-gpの発現が亢進し、quinidineの分泌が促進されていると考えられた。
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