目的:本研究は重篤な障害を生じるにもかかわらず予測不可能で確定診断が困難なType B adverse drug reaction(ADR)の発症機構と危険因子を薬物代謝から解析し、診断と予防に役立てることを目的とした。 方法:薬剤性肺炎の文献検索と全国調査によって215の原因薬物リストを作成して、その代謝酵素の臓器特異性や遺伝多型から検討を開始した。しかし、薬剤誘起性肺炎の発症頻度は低く短期間に多くの症例から情報を収集することは困難であったので、対象をてんかん371例の低Na血症、白血球減少症、γGTP・GTP上昇、精神神経疾患335例のQT延長、テガフール製剤治療中の胃がん30例の下痢、白血球減少などに拡大した。 結果:1.口腔粘膜細胞から簡便にゲノムDNAを抽出(スワブ法)して、多数の薬物代謝酵素の遺伝的多型を検討する方法を確立したことで、多くの対象者の協力を得ることができた。2.てんかん患者のType B ADR発症に関する多変量解析では、カルバマゼピン(CBZ)服用、CBZの投与量とクリアランス、重症心身障害、経管栄養などを危険因子として特定した。さらに、NONMEM法によって導いたCBZの母集団薬物動態解析結果とADR発症との関連について考察した。また、CBZの代謝酵素cytochrome P450(CYP)3A5の変異アレルCYP3A5*3のCBZクリアランスへの影響をNONMEM法で数量化した。3.フルニトラゼパム使用によって有意にQT延長を生じることを示した。4.テガフール製剤治療時の有害作用予測に尿中5-FU/α-fluoro-β-alanine値が有用であることを示唆した。
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