1997年に牛の脳から単離されたμ受容体agonistであるendomorphin-1(Tyr-Pro-Trp-Phe-NH_2)及びendomorphin-2(Tyr-Pro-Phe-Phe-NH_2)を用いて、μ受容体のいずれのsubtypeを介して抗侵害作用を発揮するか、行動薬理学的手法を用いて実験を行った。 その結果、endomorphin-1及びendomorphin-2の脊髄クモ膜下腔内投与によって引き起こされる抗侵害作用はμ受容体antagonistであるβ-funaltrexamine(40mg/kg s.c.)の前処理により完全に拮抗された。すでに、receptor binding実験の研究報告からこれら内因性peptideはμ受容体に特異的に結合することが認められており、δおよびκ受容体にはほとんど結合しないことが報告されている。 しかし、本実験においてκ受容体antagonistであるnor-binaltorphimine前処理によって、endomorphin-2の抗侵害作用が拮抗された(endomorphin-1は拮抗されず)。 更に、dynorphinA(1-17)抗体の前処理後endomorphin-2を投与することによって拮抗作用が認められたことからendomorphin-2はdynorphinA(1-17)の遊離を介して抗侵害作用を引き起こすことが認められた。興味深いことにdynorphinA(1-17)抗体によるendomorphin-2の抗侵害作用の抑制は、極めて低用量(2mg/kg s.c.24時間前処理)のnaloxonazineによって拮抗され、endomorphin-2単独投与時の抗侵害作用効力まで回復したのである。 これらの実験結果から、endomorphin-2はμ受容体を介して(endomorphin-1が作用するμ受容体とは異なる受容体)dynorphinA(1-17)を遊離することにより抗侵害作用を引き起こしていることが示唆された。
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