細胞内カルシウムイオン(Ca^<2+>)シグナルは、広範な細胞機能に関与する重要な細胞内情報伝達物質の一つであり様々なパターンが存在する。我々は、このCa^<2+>シグナルとシグナルの発生の重要な実体であるCa^<2+>によるCa^<2+>放出(CICR)チャンネル(リアノジン受容体:RyR)の分布を同時に解析できる実験系の確立を目指した。また、RyRの構造と機能の関係さらに細胞内Ca^<2+>シグナルとの関係を探るべく、悪性高熱症などの病態と関連したRyR変異体を始め、RyR変異体の作製法の簡易化を行い、以下の成果を得た。 1.全長約一万五千塩基でコードされる1型RyR(RyR1)のcDNAを各々約千五百塩基毎に11個の小さなcDNAカセットとして利用できるように改良して、各カセットを用いたcDNA塩基配列の変異体作製が容易に出来るようになった。 2.RyR1非相同性領域(D2)領域後半部位に緑色蛍光蛋白質(GFP)を融合させた組換え蛋白質としてを発現させる実験方法を開発して、GFP蛍光によるRyR1蛋白質の発現量と細胞内分布を視覚的に確認でき、同時に細胞内Ca^<2+>動態の観察が可能となった。 3.RyR1のアミノ酸配列3226〜3724番以外の領域にこのCa^<2+>放出チャンネル蛋白質の機能上で必須な部分が存在することが示唆された。 4.RyR1蛋白質分子には小胞体への移行・維持に関わるシグナル領域が複数存在することが示唆された。 5.RyR1コードする遺伝子の14512番目のシチジン塩基がグアニン塩基に変異したもの(4838番目のアミノ酸であるロイシンがバリンに変異する場合)が悪性高熱症の新たな原因遺伝子変異となり得ることが示された。
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