研究課題/領域番号 |
12672224
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
安原 一 昭和大学, 医学部, 教授 (70053999)
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研究分担者 |
西村 有希 昭和大学, 医学部, 助手 (40276572)
倉田 知光 昭和大学, 医学部, 講師 (80231299)
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キーワード | 薬物代謝 / Cytochrome P450 / CYP2C19 / 肝臓癌 / 肝硬変 / 酵素欠損 / 遺伝子欠損 |
研究概要 |
昨年度本研究事業において、肝硬変・肝癌患者における肝薬物代謝酵素の活性変動に関して検討した。その結果、肝疾患により肝薬物代謝酵素のうちチトクロームP4502C19(CYP2C19)活性が著しく低下していることを明らかにした。しかし、CYP2C19は日本人を含む東洋人では約20%が遺伝的に欠損していると言われており、癌患者より提供された試料での低活性が遺伝的な酵素欠損によるものかあるいは癌病態に起因するものであるのかに関しては不明であった。本年度は、昨年度の結果より示された結果が遺伝的な要因によるものかあるいは病態に起因するものであるのかを明らかにする事を目的として6例の患者より肝臓試料の提供を受けて検討した。本研究に対する肝臓試料は、自由意思に基づく提供であること、提供に同意した後でもいつでも同意を撤回できること、撤回しても以後の診療に一切の不利益を被らないこと、プライバシーが守られることなどを明記した説明文書および口頭による説明を行った後、文書による同意が得られた試料のみを使用した。本研究計画は、昭和大学医学部医の倫理委員会の審査承認を得て実施した。酵素活性の評価は、代表的なCYP2C19の基質であるS-メフェニトインを使用し、HPLC法にて行った。遺伝的酵素欠損の評価は、RFLP-PCR法、酵素タンパクの発現はWestern blot法にて行った。本検討に供された6検体の肝臓試料において、CYP2C19活性は3例で著明な低値を示し、他の3例ではほぼ対照値を示した。また、遺伝的多型に関する検討を行った結果、CYP2C19遺伝子のExon5における変異は3例で認められ、前述の活性低下とほぼ一致した。さらに酵素タンパク量の変動についてWestern blot法による検討を行った結果、ほぼすべての酵素試料で、抗体認識タンパクが検知された。これらの結果より、今回の検討で認められたCYP2C19活性の低下は、癌・肝硬変のような病因や病態に起因する内因性物質による阻害や酵素タンパクの発現低下による可能性よりはむしろ、癌患者における遺伝子変異によることが明らかとなった。
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