1.プロスタサイクリン(IP)アゴニストがcAMPが依存性経路を介して血管弛緩を誘発することを見出し、マキシKチャネル活性化との関連性を多角的に検討した。 2.モルモット大動脈標本のベラプロスト(IPアゴニスト)による弛緩反応は、マキシKチャネルの選択的ブロッカーであるイベリオトキシンにより強力に抑制された。 3.ベラプロストはこの標本のcAMP量を顕著に増加させ、アデニル酸シクラーゼ阻害薬であるSQ22536はこれを有意に抑制した。しかし、SQ22536はベラプロストの弛緩作用に影響しなかった。 4.モルモット大動脈の単離平滑筋細胞を用い、JPアゴニストであるベラプロストがGTP依存性にマキシKチャネル電流を増加させることを示した。GTP非水解性アナログであるGTP_γSでも同様の結果を得たが、GTPそれ自身によるチャネル活性化は認められなかった。 5.マキシKチャネルのクローンチャネル(α-サブユニット)を発現させたHEK細胞およびカエル卵母細胞を用いてベラプロストの効果を検討したところ、チャネル活性化効果は全く認められなかった。 6.モルモット大動脈では、非常に高密度のマキシKチャネル(α-サブユニット)mRNAの発現を認めた。 7.Gs蛋白に作用するコレラトキシンで大動脈標本を処置(6時間)すると、緩徐に弛緩が誘発された。コレラトキシンを熱処理するとこの作用は消失した。 8.コレラトキシンの作用はSQ22536処置によっても影響されなかった。 9.コレラトキシンの血管弛緩作用は、SQ22536処置下および非処置下でもイベリオトキシンにより有意に抑制された。 10.以上の結果から、IPアゴニストはcAMP-非依存性にマキシKチャネルを活性化し、その機構の一部にGs蛋白を介する直接的な活性化が関与することが明らかとなった。
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