Dubin-Johnson症候群は肝細胞毛細胆管側膜上の有機アニオントランスポーター(cMOAT)異常症であり、胆汁中への抱合型ビリルビンの排泄障害により黄疸を呈する常染色体劣性遺伝疾患である。 複数の医療機関の協力により、Dubin-Johnson症候群の患者さん6名の同意の基で、疾患原因遺伝子とされるcMOAT(MRP2)遺伝子の変異解析を行なってきた。これまでの解析により、2症例については既知の変異のhetelozygoteであるが、既知の変異を全く有さない症例が2症例あり、また既知の変異を1 alleleのみに有する症例が2例あった。Alleleの50%には既知の変異が存在するものの、残る50%については不明である。現在、変異の未知な患者さんについて変異の有無を証明すべく、cMOAT(MRP2)遺伝子の全領域についてSSCPとdirect sequenceにより解析を行なっている。 MDR3はPhosphatidylcholineのflippaseとして機能する膜タンパクで、この遺伝子の異常は或る型のfamilial intrahepatic cholestasisの原因となることが報告されている。培養Chang肝細胞においてMDR3mRNA発現量を検討し、低レベルではあるがこのmRNAが発現していることを既に確認して来た。この遺伝子の発現に与える薬物や生理活性物質の影響を検討したところ、アドリアマイシンによってmRNA発現の増強、ホルボールエステルのTPAによって低下を認めた。TPAによるMDR3 mRNA発現低下はprotein kinase Cの阻害剤で拮抗されたこと、protein kinase C刺激活性の無いホルボールエステルではmRNA発現低下が起こらないことから、MDR3 mRNAの発現はprotein kinase Cによって負の調節を受けることが示唆された。
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