研究概要 |
我々は、β-amyloid peptide(25-35)を投与しコリン作動性神経系の機能低下が生じたモデル動物に対して、(-)-nicotineやκ-オピオイド受容体作動薬が学習・記憶障害を改善することを報告してきた。Dynorphin A(1-17)と高い相同性を持つnociceptinもまた、低用量で学習・記憶障害を改善する。これら薬物は、虚血やβ-amyloid peptide(25-35)などによる神経障害に対し、神経保護的に作用していることが報告されている。今回、β-amyloid peptide(25-35)投与による遅発性の記憶障害に対するκ-オピオイド受容体作動薬、U-50,488Hによる記憶障害抑制作用、またその時のマウス脳内のノシセプチン前駆体prepronociceptin mRNA、prodynorphin mRNAおよびα7型ニコチン性アセチルコリン受容体(nACh)mRNA発現量の変動について検討を行った。β-Amyloid peptide(25-35)投与7日後において記憶障害が認められた。U-50,488Hをβ-amyloid peptide(25-35)処置前に投与すると記憶障害が抑制されたが、処置後ではこの効果は認められなかった。β-Amyloid peptide(25-35)投与10日後において、海馬におけるprepronociceptin mRNA、prodynorphin mRNAおよびα7型nACh受容体mRNA発現量には変化がなかったが、U-50,488Hを1時間前に処置しておくと、これらmRNA発現量が有意に減少した。以上の結果より、κ-オピオイド神経系を活性化しておくとβ-amyloid peptide(25-35)に対する神経保護的作用が見られ、これらmRNA発現量の永続的な変化がこの効果に関与している可能性が示唆された。
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