研究概要 |
近年、消化管上皮細胞にP糖蛋白質(P-gp)が発現し、一旦吸収された薬物を再び管腔側に排出することが知られている。したがって、P-gpによる薬物の排出を阻害することによりこれら薬物の消化管吸収性を改善できるものと考えられる。そこで本研究では、P-gpの機能を阻害する製剤添加物としてポリエチレングリコール(PEG)ならびにdextranに着目し、P-gpの基質となる薬物の消化管吸収に及ぼすこれら製剤添加物の影響について検討した。In vitro透過実験は、一夜絶食したWistar系雄性ラットを使用し、pentobarbital麻酔下、摘出した消化管を拡散チャンバーに装着することにより行った。P-gpの基質としてはrhodamine123を使用した。その結果、Rhodamine123の漿膜側から粘膜側への分泌方向(S to M)の透過性は、各種分子量のPEGによって阻害され、その阻害効果は用いたPEGの分子量に依存することが明らかとなった。一方、P-gpの基質でない5(6)-carboxyfluorescein(CF)の吸収(M to S)ならびに分泌方向(S to M)の透過性は、PEGを併用しても変化が認められなかったことから、PEGが膜に直接作用して薬物の透過性を増大している可能性は少ないことが示唆された。また、rhodamine123の漿膜側から粘膜側への分泌方向 (S to M)の透過性は、平均分子量約20,000のdextranの併用によっても阻害されることが認められた。
|