研究概要 |
臨床的に有効性が認められている大脳皮質第II次体性感覚野(SII)電気刺激鎮痛を容易に検出し得るモデルの確立を目的として研究を行った。前年度,ホルマリン誘発疼痛モデルにおけるSII刺激の鎮痛効果を検出し,さらにニューロパチーモデルでの効果検出を試みたが明らかな効果を見出すことができなかった。そこで,本年度は一次知覚神経,特にC線維の末梢端に発現するプロテアーゼ受容体PAR-2(protease-activated receptor-2)を刺激した場合に認められる痛覚過敏,侵害受容反応および脊髄後角Fos発現を調べ,さらに,それらにおよぼすSII電気刺激の影響を検討した。 1)末梢PAR-2活性化による疼痛・痛覚過敏モデルの作成とその特徴 ラットあるいはマウスの足底内にPAR-2活性化ペプチドを投与すると,熱痛覚過敏,侵害受容反応および脊髄後角表層におけるFosの発現が認められた。この熱痛覚過敏はNMDA受容体拮抗薬MK801,神経型NO合成酵素阻害薬7-ニトロインダゾール(7NI),カプサイシン受容体拮抗薬カプサゼピン(CPZ)により阻止された。PAR-2誘発侵害受容反応はMK801により消失したが,7NI, CPZの影響を受けなかった。PAR-2誘発脊髄後角Fos発現はμ受容体拮抗薬であるDAMGOにより消失し,PKC阻害薬であるカルホスチンCにより減少した。 2)PAR-2誘発疼痛におよぼすSII電気刺激の影響 上記1)により,PAR-2誘発疼痛モデルを確立することができたので,この新しい疼痛モデルでのSII電気刺激の効果を検討した。しかし,ラットにおいて認められたPAR-2を介する侵害受容反応および脊髄後角Fos発現はSII電気刺激によってほとんど影響を受けなかった。今後さらに,SII刺激鎮痛を検出しうる新たなモデルを検索していきたい。
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