研究課題/領域番号 |
12672234
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
李 英培 神戸学院大学, 薬学部, 助教授 (00158552)
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研究分担者 |
榎本 理世 神戸学院大学, 薬学部, 実験助手 (40258108)
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キーワード | アポトーシス / ヒストン / リン酸化 / アセチル化 / クロマチン / DNA断片化 / α-ヘリックス / カリキュリンA |
研究概要 |
アポトーシスの生化学的な実行過程はDNA断片化であり、これに関与するDNA断片化酵素の実体についても明らかにされつつある。しかしながら、DNA断片化の分子機構についての詳細は十分には解明されていない。私たちは、アポトーシス実行過程の分子機構がDNAの存在するクロマチン構造変化にあると考え、以下の検討を行なった。(1)アポトーシス実行過程おいて化学修飾されるヒストン分子種の同定、さらに(2)それに伴うクロマチン構造の変化を調べた。その結果、カリキュリンAによりアポトーシスが誘発された胸腺細胞ではDNA断片化に先行してヒストンH1、H2AおよびH3のリン酸化が亢進することを見いだした。また、これらのヒストンのリン酸化はクロマチンのα-ヘリックス構造を減少させることにより構造変化を引き起こすこと、さらにクロマチン構造変化に伴いDNA断片化酵素に対する感受性が増大することを明らかにした。これらの研究成績はクロマチンの構成成分であるヒストンの化学修飾がアポトーシスの引き金となることを示唆するものであり、クロマチン構造変化がアポトーシスの実行過程において重要な役割を有することが考えられた。 これまでの研究成果は胸腺細胞にタンパク質脱リン酸化酵素を阻害する薬物を用いることにより得られたものであるが、ヒストンの化学修飾がアポトーシスの共通の機構として重要なものかどうかを知るためヒトアストロサイト培養系におけるヒストン化学修飾の役割について検討を加えた。ヒトアストロサイトを生理食塩水に暴露後、通常の培養液に交換して培養すると細胞障害が観察され、これが一部アポトーシスによることを明らかにした。また、この細胞死に先行してヒストンのリン酸化が起こることを見いだした。リン酸化されるヒストンはH2Aであることをシークエンス法により同定した。 以上の結果から、アポトーシスの実行過程にヒストンリン酸化が関与することが明らかとなり、種々のヒストンのうち、特にヒストンH2Aのリン酸化がアポトーシス実行過程の共通の分子機構である可能性が示された。
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