研究課題/領域番号 |
12672236
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
保嶋 実 弘前大学, 医学部, 教授 (90142934)
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研究分担者 |
庄司 優 弘前大学, 医学部, 助手 (10226300)
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キーワード | 連関解析 / 内皮型NO合成酵素 / 高血圧 / 一塩基多型(SNPs) / Y染色体Alu反復多型 / 縄文系 / 弥生系 |
研究概要 |
本年度の研究実施計画 人種やヒト起原により高血圧の発症頻度が異なることはよく知られている。しかし、その分子生物学的な根拠は明らかではない。本年度はこの点の注目し前年度と同じ対象においてY染色体Alu反復多型(YAP)を指標とした縄文系(YAP+)と弥生系(YAP-)における内皮型一酸化窒素合成酵素(ecNOS)遺伝子4b/aおよびGlu298Asp多型の分布を検討し、高血圧連関解析におよぼすヒト起原の影響について検討した。 【方法】無作為に抽出され採血と遺伝子解析に同意を得られた成人男性285例を対象とした。高血圧は、1)薬物治療中、2)収縮期血圧160mmHg以上、拡張期血圧95mmHgのいずれか、あるいは両方を満たす者とした。末梢血よりDNAを抽出し、各対象者におけるYAPとecNOS 4b/a多型の遺伝子型を特異的PCR増幅により、また、Glu298Asp多型の遺伝子型をRFLP法により決定した。YAPとecNOS多型およびそれらと高血圧との連関をχ二乗法とFisher法により検定した。 【成績】285例中98例がYAP(+)で、187例がYAP(-)であった。YAP(+)群では31例(37.3%)、YAP(-)群では52例(62.7%)において高血圧を認めたが、YAPと高血圧には連関は認められなかった。しかし、ecNOS 4b/a多型の分布は、YAP(+)群とYAP(-)群のあいだで著しい片寄りが認められた(p=0.0181)。すなわち、YAP群ではa/a型が全く認められず、b/a群とYAP(-)群のあいだで著しい片寄りが認められた(p=0.0181)。すなわち、YAP(+)群ではa/a型が全く認められず、b/a型も7.1%にとどまった。また、4b/a多型と高血圧との連関はYAP(-)群および両群全体では認められなかったが、YAP(+)群では高血圧群でb/b型が少なく有意の連関が認められた(p=0.0437)。一方、Glu298Asp多型についてはYAP(+)群とYAP(-)群のあいだで分布に不均衡は認められなかった。 【結論】今回の検討では、YAPを指標とした縄文系と弥生系のあいだでecNOS 4b/a多型に著しい不均衡が認められ、高血圧との連関も両系で異なっていた。これは、4b/a多型が縄文系と弥生系への分岐後に発生した可能性および対象集団における縄文系と弥生系の混合比が連関解析の結果に影響を与える可能性を示唆する。また以上の結果は、人種やヒト起源による高血圧の発症頻度の違いに遺伝的背景の差がひとつの要因となりうる可能性を支持するものである
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