造血器腫瘍において抗がん剤に耐性を獲得し治療抵抗性になることは重要な問題である。そのため、抗がん剤耐性獲得機序を解明し、耐性に関連する遺伝子および蛋白を同定し、それらの早期診断法を確立することが必要である。本年度はこれまでの2年間における耐性獲得機序解明の研究をもとに、急性白血病における各種遺伝子の発現量を迅速かつ微量で測定しうる定量系を開発した。まず、急性白血病における耐性に関与する重要な因子は多剤耐性に関与するMDR1遺伝子(P糖蛋白)およびMRP1遺伝子、araC耐性に関与するdeoxycytidine kinase(dCK)であることを明らかにした。これらの遺伝子発現量の定量的検出法を、リアルタイム定量法を確立することを試み、基礎的検討において感度および特異性に優れていることを確認し、健常者での臨床検査におけるカットオフ値を設定した。本年度は本遺伝子検査法の臨床検体について臨床的意義を追求した。その結果、本法は従来の多剤耐性検査と比較して検出感度が高く、臨床的に抗がん剤耐性の診断に有用であることが示された。とくに、初発と再発の急性骨髄性白血病での治療抵抗性とMDR1発現量との関連性が示唆され、本法によるMDR1遺伝子定量法は治療抵抗性の予測に有用であることが示された。しかし、MRP1とdCKの発現量と治療抵抗性との関連についてはこれまでの検討成績からは明らかではなく、さらに検討を重ねる必要がある。したがって、本年度は本法が抗がん剤耐性の早期診断法として導入可能な臨床検査法であることを実証し、臨床的意義を明らかにした。さらに、抗がん剤毎の耐性関連遺伝子がされれば、本法による遺伝子定量法に応用可能であり、最近のDNAアレイ解析との比較検討に有用であることが示唆される。
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