研究課題/領域番号 |
12672242
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
松野 容子 山口大学, 医学部・附属病院, 助手 (60229515)
|
研究分担者 |
山下 進 山口大学, 医学部・附属病院, 医員(臨床)
定光 大海 山口大学, 医学部, 助教授 (10187164)
前川 剛志 山口大学, 医学部, 教授 (60034972)
鶴田 良介 山口大学, 医学部・附属病院, 助手 (30263768)
|
キーワード | 画像伝送 / グラム染色 / 感染症 / 迅速診断 / 品質管理 / Quality Assurance / データベース / 血液培養 |
研究概要 |
臨床の現場で、医師自らがグラム染色・鏡検を実施し、早期診断とより適切な治療への変換を図ることを主目的として、診療・教育のための双方向画像伝送・データベースシステムQuick Microscopic Diagnosis System(QMDS)の構築を行った.従来の感染症情報システムが検査部からの情報発信であるのに対して、本システムは、臨床現場を情報発信源として検査部から鏡検診断支援を得るという、逆方向のシステム運用を指向している. 以下に本年度の実績を列記した. (1)感染症症例データベースとして取り上げるべき項目を検討し、その構造を決定した。これらの項目は、救命センター患者台帳ファイルからのデータと検査システムからの検体検査データを中心とし、とくに微生物検査データに検査材料の肉眼的、顕微鏡的所見などの品質評価情報を含めることとした.これは、適切な検体採取など検査前品質管理を含めたQuality Assuranceに対する医師の理解を深めることを目的としている. (2)卒前および卒後教育システムとしての活用方法を検討し、それに即した症例データベースを構築した.ここでは、画像情報と患者病態とのマッチングが容易であること、および微生物検査における画像と数値・文字情報を統合し、データ解釈のトレーニングに役立てること、などを考慮した. (3)医師のグラム染色・鏡検技術の向上を図るため、本システムの稼動に先立って、救命センター設置の血液培養装置に毎週トレーニング用ボトルを準備するなど、システムに付随した効果的な運用方法を模索した.約半年間のトレーニング期間を経て、実際の感染症患者に対し、医師がグラム染色・鏡検して迅速な診断と治療が可能であったという貴重な体験を得ており、救命センターにおけるグラム染色・鏡検の24時間体制は徐々にではあるが確立されつつある. 検査を診療の現場で実施すること(いわゆるpoint of care testing)の利点は、検査に関する知識の修得や医師による適切な検査の実施、データの正しい解釈など、より良い医療のための教育環境を生み出す点にある.なかでも細菌検査への関心と理解を深めることは、今後のわが国における感染症診療の質を向上させる上で大きく役立つものと考えられる.今後は以下の課題に取り組む. (1)システムの本稼動と感染症例のデータ集積を行う. (2)メンテナンス業務など、救命センターと検査部における円滑なシステム運用のための業務環境を整備する. (3)平成16年度の医師の臨床研修必修化に向けた卒前・卒後教育や、Infection Control Doctor(ICD)による院内感染サーベイランス実施のための情報環境の充実など、多目的システムとしての運用を図るとともに、その有効性の評価方法について検討する.
|