今回の検討では住友電気工業研究所で開発された液体窒素による32チャンネル磁束計を用いて、心臓磁界を測定し、一心周期の心臓活動電流のvisualizationを試みた。 液体窒素を用いて作動する高温超伝導量子干渉計を用いて心臓磁界を測定し、磁界分布より電流分布を表示することにより、一心周期における心臓活動電流のvisualizationが可能かどうか検討した。心臓磁束計は、HoBaCuO薄膜を素子材料とした32チャンネルセンサで、磁場分解能は<1pT/√Hz【greater than or equal】Hzで作動温度は77K(液体窒素温度)である。 健常例について、磁気シールド室内で住友電工製32チャンネル高温超伝導量子干渉計を用いて、心臓磁界を測定した。各32誘導点について、隣接する2点の磁界勾配から各誘導点の電流ベクトルを求めた。前胸部の電流分布のスプライン補間を行い、current density mapを作成した。 心房脱分極相では、2峰性の電流分布を示し、左房と右房の心起電力を分離して観察することができた。心室脱分極相の電流分布図では、心室中隔より左室と右室に分離した心起電力を検出できた。 心臓磁界検出は、これまで高額の液体ヘリウムを用いた低温超伝導量子干渉計を用いる必要があった。この低温磁気センサは高額であり、かつ液体ヘリウムの取り扱いが煩雑であり臨床応用の普及の妨げとなっていた。今回使用した磁界測定システムは、比較的安価で位置分解能に優れた特性により、心臓活動電流を詳細に検出でき、臨床応用が期待される。
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