液体窒素を用いた高温超伝導生体磁気計測装置を用いて、心臓活動電流を視覚的に検出可能かどうか、さらに心臓活動電流の伝播速度が推定可能かどうか検討した。32チャンネル超伝導量子干渉計(住友電工ハイテックス社製)を用いて磁気シールド内で、心臓磁界(心磁図)を計測した。磁界分布図より、心房興奮および心室興奮活動電流の信号源の三次元的位置を計算し、心臓活動電流の伝播速度を求めた。さらに、各32誘導点について、隣接する2点の磁界勾配から各誘導点の電流ベクトルを求めた。前胸部の電流分布のスプライン補間を行い、current density mapを作成した。心磁図P波の磁界分布図より心房脱分極相における心房伝導速度は、0.67m/secであった。一方、心室筋における電流dipoleの伝導速度は、心室脱分極早期では、0.85m/secであった。心室脱分極相の電流分布図では、心室中隔より左室と右室に分離した心起電力を検出できち心臓磁界測定は、心電図法と異なり体組織の影響をほとんど受けることなく、電流源をミリ単位の高精度で推定することが可能である。本法により求めた電流伝播速度はこれまでの実験的報告とほぼ一致した。心臓磁界測定は、電流源の位置推定のみでなく、活動電流伝播速度を非侵襲的に推定可能であると考えられた。心臓磁界検出は、これまで高額の液体ヘリウムを用いた低温超伝導量子干渉計を用いる必要があった。この低温磁気センサは高額であり、かつ液体ヘリウムの取り扱いが煩雑であり臨床応用の普及の妨げとならていた。今回使用した磁界測定システムは、比較的安価で位置分解能に優れた特性により、心臓活動電流を詳細に検出でき、臨床応用が期待される。
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