研究概要 |
ATL細胞は死のシグナルの最初の受容体であるFasをup-regulateし、しかもin vitroでは容易にagonistic anti-Fas抗体にてアポトーシス死をきたす。一方、in vivoではATL細胞は低分裂にも関わらず細胞数は増加し続けることから、アポトーシス死を回避する何らかの機序の存在が予想される。そこで、今年度はFas直下のcasp-8とFas-signalling抑制蛋白であるFAP-1(Fas-associated phosphatse-1),FLIP(FLICE-inhibitory protein),SVV(survivin)などのmRNAについて解析した。対象は、40例のde novo ATL cellsと当研究室で樹立した8例のATL cell linesを用い、RT-PCRにて目的mRNAを増幅後に半定量した。casp-8のRT-PCR増幅産物の解析で、ATL細胞はexon8/9の間に136bpをinsertionしたalternative splicing formを異常にup-regulateしていることが明らかにされた。しかも、このinsertionはintronの一部の挿入でframe shift機序でストップコドンを生じる為に酵素活性部分の大部分を欠くtruncated casp-8となり、decoy作用にてFas-mediated apotosisを負に制御していることが予想された。一方、大部分のATL細胞は正常リンパ球の主要splicing formであるintact casp-8も増加しているが、truncated formも増加しており、その発現比は慢性、急性、cell-lineの間で差があり、しかも細胞死の誘導率と相関する傾向にあった。 次に、FAP-1,FLIP,SVVの抑制蛋白においては、SVV mRNAのみが全例において高発現していた。このSVVは正常細胞にはほとんだ検出されず、しかもATL細胞におけるSVV mRNAの発現量とATLの予後は相関したことから、SVVはATLの存在や悪性度のbio-markerになり、同時に抗腫瘍分子の治療ターゲットの一つにもなることが示唆された。この様に、ATL cellsはsplicingの調節によるaberrant proteaseや過剰なprotease抑制蛋白の産生など複数の機序にて負に制御されていることが示された。
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