研究概要 |
細胞死の一つにFasを介する機序があり、増腫瘍性との関連が示唆されている。特に、Fasを高発現しているATL細胞は、Fas自体の構造異常か細胞内下流のシグナル伝達障害かのいずれかの過程でaberrantに調節されていることが予想される,そこで、ATLは、何故Fas受容体をup-regulateしているにかかわらず生体内で生きながらえているのかの機序を研究し、以下の成果が得られた。1.ATLの約90%の症例はFasをリンパ球の3倍多く発現しているが、以下の4点によってapoptotic cell-deathから回避していることが明らかになった。(1)膜貫通領域をsplicing outしたsoluble formを多量に分泌して、これがin vivoではup-regulated Fasのdecoyとして作用することが示された。(2)症例の一部で、Fasのdeath domainの変異が有り、その結果細胞内シグナルが伝達されない。(3)細胞内伝達系のkey-caspaseであるcasp-8が酵素としてのactive siteを欠損した異常isoformを大量に産生することによって、これがdecoyとしてシグナルを減弱している機序が示された。(4)Fasシグナル伝達系の抑制蛋白、FAP-1, FLIP, SVVのmRNAをRT-PCRでスクリーニングした結果、SVVのみが全例において高発現し、しかも腫瘍の悪性度とも相関していた。 2.ATLの約10%はfull-lengthのmFas transcriptから膜貫通領域をもたないtranscriptsへシフトされることによって膜Fasをdown-regulateして生へのadvantageを得ている機序が考えられた。
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