研究概要 |
M-CSFの胎盤組織内および血中での濃度を測定し,妊娠中毒症の病態生理を検討した。総蛋白(TP)濃度で較正した胎盤組織中M-CSF/TPは正常妊娠群96.3±21.6(U/mg protein, M±SD),中毒症群115.6±29.0であり,血中M-CSFは正常群1289±464(U/ml)(n=19),中毒症群1720±502(n=18)であった。胎盤・血液中ともに妊娠中毒症妊婦の方が有意に高い濃度を示したことから,M-CSFが妊娠中毒症の病態へ関与していることが示唆された。また末梢血のM-CSF濃度を測定することにより,子宮内胎児発育不全(IUGR)の病態生理を検討した。M-CSF濃度はIUGR群1322(U/ml, Median)(n=20),正常群1118(n=27)であり,IUGR群の方が有意に高値であった。したがってIUGR妊娠(低体重新生児)の分娩にM-CSFの関与が想定された。帝王切開術を施行した正常妊婦15人と妊娠中毒症妊婦12人から手術前,術後1日,10日の3回にわたって末梢血を採取し,M-CSF濃度を測定した。両群ともM-CSF濃度は術後1日に有意に上昇し,術後10日には有意に低下した。このM-CSF濃度の上昇の程度が両群間で差を認めなかったため,その上昇機序は両群間で同様であると考えられた。この他,正常非妊婦,正常妊婦および妊娠中毒症妊婦から採尿し,6種の尿中パラメーターを測定して比較することにより,正常妊娠での腎臓の生理と妊娠中毒症での腎臓の病態生理を解明した。また正常非妊婦および正常妊娠20, 30, 36週の妊婦から採血および採尿をして,流血中の止血機転に関与する6種のパラメーターを測定し,妊娠経過によって発現する特有な変化を解明した。
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