昨年までに単球細胞株THP-1細胞でSAA産生の刺激因子の作用様式が異なることを見い出した。本年度は、同細胞の培養系に精製SAAを添加し、上清のSAA濃度の変化、細胞形態への影響、アミロイド線維化が起こるか否かを検討した。SAAは大腸菌発現によるリコンビナントSAA1.1を使用した。まず、ウシ胎児血清の入った通常の培養液中に生理的な濃度で添加してもSAAは安定で、細胞にも特徴的な変化は起こらなかった。この系においてSAA濃度を極端に高めるとSAA自体の濃度変化はなかったが、細胞が凝集する傾向にあった。培養細胞をウシ血清のない培養液で洗い、ウシ血清のない条件下でSAAを添加すると細胞が凝集する傾向にあった。しかし、いずれの系においてもコンゴーレッド陽性となるほどのアミロイド線維形成は見られなかった。以上より、SAAは血清存在下では、脂質結合型になるため安定であり、脂質非結合型のSAAが細胞膜に粘着し、細胞凝集作用を示すことが示唆された。線維化に至るには細胞内に貪食されるか、細胞内からの線維形成因子のようなものの放出が必要とされた。またヒトSAAの繊維化能自体にも問題がある可能性があり、マウスSAAを用いた実験を実施中である。
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