研究概要 |
膵癌早期診断のための血中アミリン(IAPP)濃度の感度と特異性をCA19-9の組み合わせで検討した。血中アミリンの測定法を確立した(Am J Pathol 157:2101,2000)。アミリンは血中のプロテアーゼにより容易に分解されることが考えられたので、採血時に血液に添加するプロテアーゼ阻害剤の検討をおこなった。その結果、血液1ml当たり2μg antipain dihydrochloride 25 μg elastainal 0.5μg leupeptin及び0.5EDTA(PIM)を加えた試験管に採血し、直ちに血漿分離して測定まで-80℃で保存した。このような血漿試料においてIAPPは4℃で2時間安定であった。一方、一般的にペプチド測定に適用されているアプロチニンとEDTA添加血漿に加えられた合成IAPPの免疫活性は4℃、2時間で16%失われた。健常人のIAPP濃度は1.8-5.93pmol/Lの範囲内にあり、膵癌患者の平均濃度は健常人に比較して有意に上昇していた(7.1±0.9 vs 4.0±0.3 pmol/L、p<0.001)。しかし、ラ氏島細胞癌、胆嚢癌、十二指腸乳頭癌、腎癌、及び慢性、急性の膵炎の患者の一部においても高値が見られた。カットオフ値を6pmol/Lとした場合の感度と特典性はそれぞれ47%と73%であった。一方、CA19-9との組み合わせにおいて(CA19-9のcut off 値:70IU/ml)いずれかの値がcutoff値以上である場合をポジティブとするとその感度と特異性はそれぞれ85%と63%であった(Clin Chem 47:2071,2001)。さらに、上記測定系と異なった抗原部位を認識するモノクローナル抗体を用いた固相EIAを確立し、同試料を測定した場合も膵癌検出傾向は変わらなかった。このように、IAPPは単独では早期膵癌検出の有用なマーカーではないと結論された。
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