研究概要 |
本研究は、夜間の介護によって生じる心身への負担を明らかにすることを目的としている。身体的負担については、血圧日内変動を調査し循環動態における負担を分析する。 今年度は、24時間血圧動態の変化の基礎的データの収集を行った。研究参加の了承を得た健康な女性で血圧測定が行える看護婦20代5名と30代5名の計10名を対象とし、携帯用血圧モニタシステム(スペースラブメディカル社製90217)を用い、3通りの条件下で3回測定した。1回目は強制的に3度、夜間の睡眠を中断し、5分間動いた後、手動測定した。2回目は1度中断した。3回目は中断しなかった。検査成績の解析はABPレポートマネージメントシステムを用い、EXCEL及びSPSSにて統計処理を行った。就寝と起床時刻を行動記録より調査し、日中覚醒時と夜間睡眠時の血圧の降下率を分析し、3回のnon-dipper(10%未満)の割合を比較した。結果、10名の睡眠を3度中断した1回目の収縮期圧の日中の平均は112.6±13.2mmHg、夜間は100.1±10.0mmHgであり、夜間の平均値が日中に比べ有意に降下した人は8名いた。降下値の平均は12.5±8.4mmHgで、non-dipperは5名いた。1度中断した2回目の日中は111.3±12.1mmHg、夜間は101.0±10.3mmHgであり、有意に降下した人は8名いた。降下値は10.3±5.7mmHgで、non-dipperは6名いた。中断しなかった3回目の日中は111.2士11.4mmHg、夜間は97.5±9.6mmHgであり、10名全員が有意に降下していた。降下値は13.7±5.5mmHgであり、non-dipperは3名おり、その内の2名は3回ともnon-dipperだった。尚、3回目の拡張期圧の日中の平均は73.0±11.0mmHg、夜間は60.2±7.9mmHg、降下は12.8±3.8mmHgであり、脈拍の日中の平均は73.7±8.0回、夜間は58.0±7.8回、降下値は15.7±8.8回だった。収縮期圧、拡張期圧、及び脈拍における3回の降下値間にはいずれも有意差は認められなかったが(ANOVA)、中断しなかった3回目の夜間の平均値は、日中に比べ全員が有意に降下しており、1,2回目に比べnon-dipperの割合は少なかった。したがって、睡眠を中断することによる血圧動態への影響が示唆された。 以上より、夜間の睡眠を中断して介護している人の循環動態への負担が予測された。
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